ソーシャルビーコンという考え方

Bluetoothビーコンに対する世界の取り組み

今既に世の中に存在するBluetoothビーコンはとてつもない可能性を持っています。

既に世界中の色々なところで、実験的試みが始まっています。

ルーマニアやイギリスでは、既に視覚障害者向けの取り組みが実験され、ごく限られたエリアですが、いくつかの実験が成功しています。

ビーコン利用の視覚障害者向け構内案内「Wayfindr」、ロンドン地下鉄で実験中(ITmedia・2015年3月9日)

Beacon音声ガイダンスで視覚障害者の暮らしを自由に ルーマニアでの取り組みにみるバリアフリー社会のBeacon(Beacon Labo・2015年6月18日)

視覚障害者だけではなく、健常者に対する取り組みも、実験が始まっています。マーケティングだけではなく、認知症のお年寄りや、子供を見守る使い方ができないだろうか、と考えている会社もあります。

O2Oだけじゃない BLEを使った「Beacon」の可能性(ITmedia・2014年6月4日)

つまりもう、私達人類は素晴らしい技術を既に持っています。

現在のビーコンが持つ問題点

では、このまま数年が経過した時、この技術は普及しているでしょうか。私は、

「ある程度は普及しているが、活用はされていない」

という未来を予想しています。なぜでしょうか?こんなに素晴らしい技術なのになぜ爆発的に普及しないのでしょう。

それは、

「私達の社会が、ビーコンを管理する仕組みを持っていない」

からなのです。その仕組みがあれば、この技術は爆発的に普及します。きっと2020年の東京オリンピックの頃には、視覚障害者の方はビーコンを頼りに散歩に行くことができ、健常者が間違った電車に乗ろうとしたら警告してくれる、等といった仕組みが街じゅうで体験できるようになるでしょう。

なぜ管理する仕組みが必要なの?

では管理する仕組みが無いまま時の過ぎた世界を想像してみましょう。

各社がそれぞれのビーコンを開発していった時、そこでは必ずシェア争いが発生します。もうその発端は世界に現れています。グーグルはつい先日の2015年7月14日に、独自の規格を投入するという発表をしました。(私はこの記事を書いている7月21日の夜に初めて知りました。グーグルはやっぱりビーコンを進化させていました。しかし私は同時に、世界が恐れていた方向に進んでしまっている事を知ってしまったのです)

遂に米GoogleがBeaconオープンプラットフォーム「Eddystone」を発表 超巨大プラットフォームの本格参入で過熱するBeacon市場(Beacon LABO・2015年7月21日)

既にアップルはビーコン市場に参入し、自社の策定した規格のビーコンを売り込んでいます。日本でも東芝やパナソニック、シャープ等の巨大な資本がきっとシェア争いを始めます。

そうなるとユーザーはどうなりますか?

グーグル1社がシェア100%、という状況であればあまり問題はないかもしれません。しかし1社でシェアを全て占めるという状況は、経済の世界ではほぼ存在しません。既にアップルのibeaconのシェアは100%ではないのですから、実際にシェア争いは起きてしまっているのです。

このままシェア争いが続き、東京ではグーグルのビーコンが比較的強い、西日本では日立のビーコンが強い、どれも完璧ではない。そうなった時、ビーコンはうまく使われる事ができないでしょう。3社が30%強ずつのシェアを持っていたとしたら、3割の人しか対象でなくなってしまいます。

あなたがお店を経営していて、ビーコンを設置しようとした時、こんな状況だったらどこの会社のビーコンを設置すればいいか頭を悩ますでしょう。もしかしたら設置をするのをやめてしまうかもしれません。これでは私の夢見る、どこでも視覚障害者が新しい何かを知ることができる世界はきっと訪れなくなってしまいます。

それでもまだこの状況くらいだったら、なんとか活用することもできます。

ソーシャルビーコンの実現する世界の3分の1以下、実際には2%くらいかもしれませんが、なんとか活用できます。

3社でシェア争いをしているのであれば、データベースを作成する側、つまりそれを活用したアプリケーションを作成する人たちが3社のビーコンに対応するように作ればなんとか使えるようにはなります。しかし管理は煩雑になり、情報の整理は複雑な仕組みが必要になります。

ですがこの状況は、前もって防ぐ事ができるのです。それが、ビーコンを管理する仕組みです。

管理する仕組みができるとどうなるか。

私はこの管理する仕組みは、国が行うべきだと考えます。国家が行えば、必ずシェアは100%にすることができます。方法としては、例えば国から許諾を得た者だけが作る事ができる免許制等です。(もっといいアイデアがあるかもしれません)

putid

 このようにIDを割り振り、あとはメーカーに自由に作って貰えば、ユーザーはどこのメーカーのビーコンアプリを導入するか迷う必要はありません。それをアプリで使おうとする開発者も、各社のビーコンによって対応を変える必要もありません。設置する人も、どこのビーコンを自分の店の入口に設置するかを迷う必要がないのです。(もちろんIDはもっと複雑化する必要があります。それについては、総務省がきちんとやってくれるでしょう)

そして何よりのメリットは、このような綺麗なIDの割り振りが実現した時、そのビーコンを全てのユーザーが活用できることなのです。ここから先がまさに”ソーシャル”の部分です。

何がソーシャルなのか?

この綺麗なIDの割り振りができ、皆が自分の店にビーコンを設置しようと思い、設置してくれたとしましょう。(私はこのIDの割り振りが実現した時、それは日本中で自発的に起きてくれる流れだと想像しています)

その時、誰がそれをデータベースにするのでしょうか?それは頭のいい開発者です。一つではなく、いくつもの素晴らしいデータベースが作られるでしょう。そして素晴らしくないデータベースは淘汰されていきます。(なので、これが実現すると私が儲かるという話ではありません。もっと頭のいい人が儲ける話なんです。残念ながら)

ではそのデータベースが作られたとして、そのデータベースに誰が情報を登録するのでしょう?国がやりますか?税金を投入して。莫大な管理コストがかかります。あなたがラーメン屋を開店しました。その情報は誰が登録するのですか?

きっと勘のいい方は気づいたと思います。

私達全員が、そこにあるビーコンの情報を登録し、それが間違った情報であれば正す事ができる。

これがソーシャルビーコンの考え方です。wikipediaのような仕組みだと思ってもらえればわかりやすいかもしれません。

あなたがラーメン屋を開店し、そこにソーシャルビーコンを設置したら、あなたが自分の店の名前を登録できます。間違っていたらそれを正してくれる人がいます。そんな仕組みを誰かが作ってくれます。もちろん本人確認はある程度しないといけません。いたずらをするユーザーを締め出す仕組みも必要です。すごく面倒だと感じるかもしれません。でもそれは誰か頭のいい人が一人やってくれればいいのです。あなたがすることはその恩恵を受けるだけです。

youtubeのチャンネルのように、色々なチャンネルを皆が自由に編集するなんてことも面白いかもしれません。

歴史好きな人は歴史チャンネルをオンにしておけば、寺や神社に行ったらその歴史がスマートフォンに飛んできます。

グルメチャンネルをオンにしておけば、お店に着席した時にメニューが飛んできます。画面上に店員さんを呼ぶボタンが出てくるかもしれません。クーポンが好きな人は、クーポンチャンネルをオンにすればいいのです。

設置する側はどうでしょう。あなたが自分のお店の前にソーシャルビーコンを設置すると、どういうメリットがあるんでしょうか。

もちろん視覚障害者の役に立ちますので、「私の店は社会的な貢献をしていますよ」というアピールをすることができます。でもメリットはそれだけじゃありません。きっとグルメサイトはそのビーコンの情報を整理してきます。あなたのお店のメニューを、勝手に登録してくれるのです。お客さんが前を通りかかれば、お客さんのスマートフォンにあなたのお店のメニューが飛びます。お客さんは価格や料理を判断し、そこであなたのお店に入るかどうかを決めます。あなたがお店を経営する時、自分のお店の前に看板を置かないなんて選択をしますか?しませんよね?ソーシャルビーコンは今あなたのお店の前に置いてある看板より有能です。英語しか理解できないユーザーには英語で、ドイツ語しか理解できないユーザーにはドイツ語で宣伝をしてくれます。

そう、ソーシャルビーコンは有能な看板になります。安価で管理コストもほとんどかかりません。

きちんと浸透すれば、自動ドアメーカーはセンサーにソーシャルビーコンを埋め込むでしょう。看板屋さんは、内部にソーシャルビーコンを埋め込みます。そうすればもう管理コストはほぼゼロです。壊れるまで何もする必要はありません。

爆発的に普及するってイメージ、わかってくれましたか?

悲しい話と希望に満ち溢れた話

盲学校の先生にお話を伺った時、実はこういう仕組みが今まで何度も試みられた事があったそうです。

視覚障害者のほとんどが持つ白い杖に、音声案内の端末を入れたり、バイブレーションで教えてくれるような仕組みを考案し、実験した方がいらっしゃったそうです。

ですが、残念ながらその仕組は広まる事は無かったそうです。

それは、視覚障害者の人数は多くなく、視覚障害者だけのための仕組みでは、ビジネスとして成立できなかったからでした。悲しい事ですが、それが現実なのです。全人口の1%くらいしかいない視覚障害者のために、私達の社会は何もできなかったのです。

しかしビーコンは違います。視覚障害者の人生を変える事ができる仕組みなのは間違い無く、さらに私達の生活をも変えるパワーがあります。今までできなかった事が、もう実現の一歩手前にあるんです。

やっと現れたbluetoothビーコンという素晴らしい技術を、私利のために独占することは誰もやってはいけないのです。

どうかソーシャルビーコンという考え方に賛同し、署名をして下さい。

2015年7月21日

柿澤亨祐